シロツメグサを詰みに第二話
EX=WORD1

『今まで全く感知されることのなかった**を確認した』
『**の転送をします』

『要請を確認、転送を許可します』

『核への転送終了、許可の審議に入る』
『高濃度の**を確認、規定容量大幅突破、これより**を開始する』

『**に及ぶ**を実行、各機能起動開始』
『変換による**の生成に成功』

『矛盾に対しての変換及び、修正追記を実行中』

『記憶フェイズ――――――完了』
『生体フェイズ――――――――完了』
『環境フェイズ――――完了』

『細部を補正、コーティング完了――』


『エラー発生、高葉倖人への**が拒否されました』

『エラーポイントに修正をスタンバイ、4、3、2、1』
『修正拒否』
『再度、修正スタンバイ、4、3、2、1』
『修正拒否』

『再度――』
『―――――』
『―――』
『――』
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シロツメグサ2−2
現実8

「―――朝か…」
 さっぱりとしている―――起きて一番に感じたことは、いつもの朝とは違った爽快感のある目覚めだった。カーテンを通り抜ける光が、眼にふわりと差し込む。

シャツを触ってみる。汗を掻いた形跡はあるけれど、いつもの様な嫌悪感がない。
「あの夢は見ていたのに……」
 いつもとは違う空気にとまどいながらも、いつもと同じようにシャワーを浴びて、朝の支度を始めた。

 制服に着替えてから、居間に入る。
 机の上にはいつもと同じ様に朝ご飯と、メモ書きが置いてあった―――――――?
(何か違和感が……)
 よく見ると、いつもは千円札だけがメモの隣においてあるのに、今日は弁当箱のようなものが置いてあった。

(そうか、今日はあいつの……)
 毎年、四月の一日は高葉圭(たかばけい)、俺の妹の命日だ。この弁当箱は、毎年お墓の前で食べる時の為のもの。
 両親はあの日から、生きることへの望みを失ったかの様に、お互いを拒絶した。俺の事も。

 カレンダーを見ると、1の数字に赤丸が付いていた。

(忘れててごめんな……)
 そう心の中で呟いて、千円札を握りこみ弁当箱を鞄にしまった。

 今日は一年で一番大切な、命の日だ。
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シロツメグサ2−3
現実9
 
「倖人、聞いてくれよっ!!」
 通学路を歩いていると、いつも通り後ろから時生が歩いてきた。今日は、いつものニュース群の中でも特別、面白いことがあったに違いない。
「今日は一際うるさいな、お前は……」
「まあそう言うなって。お前もこんなにうるさく言われたら、多少なりとも気になるだろ?」
 にやり、と微笑む時生。
「その為にうるさく言ってるんだとしたら、これから二度とうるさく声をかけてくるなよな……」
 時生を下から見上げるように睨み付けた。俺の今の目は苛立ちによって、そうとうにキていると思われる。
「まあそんなに苛々するなって、昨日の話の続きがあるんだよ」
「昨日の?」
 昨日のことを思い出すと、コンビニの駐車場での事件がでてくる。色々な情景が一気に頭を駆け巡った。少し気持ちが悪くなった。
「覚えてないのかよ、横台寺(おおだいじ)電気の社長の話だよ!!」
「横台寺――、社長が捕まったとかいうやつか?」
「それだよそれ、それの続報がでたんだよ!!」と時生はうれしそうに、俺を指差した。

「続報って言ったって、社長は捕まったんだろ?新しい罪でも見つかったのか?」
 終わってしまった事件に、こんなにも人を楽しませる面白いことがあるのだろうか。
「いや、今の時代にそんなことあるんだなって思ったよ、それくらいに驚いたんだ……」
 時生の顔は好奇心と、愉悦に満ち溢れている。どんな言葉がでてくるのかわからないが、待たされすぎて興味がイラつきに変わってきた。
「で、何があったんだ?」

 聞けば聞くほどに、時生の表情がうざくなっていく。そして時生はとんでもないことを口走った。

「消えたんだよ、その社長が」

「―――は?」
 確かに今の時代に、消えたという言葉はふさわしくない。それが人のことなら尚更だ。

「その場にいた警察官の話によれば、一瞬眼を離した隙に社長がいなくなったらしい」

「―――――社長は奇術師だったと」
 あまりにも現実離れしすぎていて、そんな言葉しかでてこなかった。
「なっ、面白いだろ!?」
「ああ、あまりに不思議すぎて涙でてきた……」

 時生の話した情報のソースはどこか知らないが、もうどうでもよくなってしまった。

 俺は朝の陽気に当たりながら、一つあくびをした。
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シロツメグサ2−4
現実10

「おっはよ、倖人〜♪」
「――――はい?」
 教室に入ると、佑香がいきなり甘い声で挨拶をしてきた。しかも、手まで振っている。毎度毎度、こいつの朝一番の元気はどこから来ているのだろうか。
「あんたさー、せっかくあたしが倖人の灰色の朝に色つけてあげたのに、そういう反応するわけ?」
「何か昨日から、朝のテンション高くないでしょうか……」
 佑香のテンションについていけず、俺は机に突っ伏した状態で佑香の言葉に答えた。
「だって、あんた今日は一段と暗いんだもん。何か考え事?」
「確かに、倖人今朝何かあったのか?もしかして朝飯に苦手な食べ物があったとか?」
 何でこいつらは俺の細かい変化に気づくんだよ……と心の中で突っ込みつつ、真顔で心配している時生の顔が少し笑えた。

「二人に言ったことがなかったけどさ、今日は俺の妹の命日なんだよ……」

「「―――えっ?」」
 二人の声がハモった。
「だからかな、少し雰囲気にも出てるのかもな」
 二人が眼を見合って、固まっている。

「命日って、あの命日か?」
 時生が眉毛を曲げて、こちらを訝しがっている。何か俺が変なことでも言ったかのようだった。
「命日に後どんな命日があるんだよ……」

「―――あ、そうか」何かに気づいたのか、佑香が時生の耳に手を当てて、何かぼそぼそ言っている。こういう時に空気の読める佑香がいると助かる。
「ああ、なるほど……」
 時生が何かに納得したのか、掌にこぶしをついている。

「じゃあ妹さんによろしくな、今日墓参り行くんだろ?」
「ああ、一応言っといてやるよ」
 俺は少し笑いながら、鞄に入っている弁当箱を確かめた。

 そう、今日は墓参りに行く日だ。
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シロツメグサ2−5
現実11

「みんなおはよう、今日は今年初めての授業があるけど、怠けないで勉強しましょうね」

 松陰(まつかげ)先生の挨拶にクラス中が阿鼻叫喚をあげる。今までのお休みムードを吹き飛ばされたためか、一人一人の顔が蒼白く染まっている。

「しっかーし、大ニュースがあります!!このクラスに転校生が来ましたーー、入っていらっしゃい!!」

 松陰先生の掛け声に答えるように教室の扉が開く。クラスメイト達は先生の不意打ちに、硬直してしまっていた。

―――そして、長い艶のある黒髪をたなびかせた美少女が現れた。

 その転校生は端整な顔つきをしていたが、すました表情なせいか少し高圧的な雰囲気を出していた。少なくとも、俺にはそう感じられた。

「じゃあ自己紹介をお願いね」

 転校生が一歩前に出る。その瞬間、転校生の強い視線を受けたような気がした。

「この町の隣、永都町から引っ越してきました。

――――――横台寺静歌(おうだいじしずか)といいます、よろしくお願いします」

 何故だろうか、教室が小さな静寂、そしてざわめきに包まれている。周囲を軽く見渡すと、全員が何かしらの戸惑いを浮かべている。普通、転校生が来たときというのは、もう少し明るい雰囲気なのではないだろうか。
 すると、後ろから時生が肩を揺すってきた。
「―――おい、今の聞いたかっ」
 時生が小さな声でささやく。振り向くと、時生は物凄く興奮している。が、今の状況を考えて、必死に抑えているようだった。
「―――今朝の俺の話覚えているか?あの転校生と、今朝のニュースの社長、同じ苗字だぞっ」
「今朝のお前の話?何ていってたっけ、横台寺……静歌……」

 横台寺、、今朝の時生の話にでてきた、脱獄した社長……!!

「はーい、はいこっち注目してー!!一日違いでクラスメイトになった横台寺さんとみんな仲良くしてね、じゃあ朝礼を始めましょう――――」

 先生に呼ばれていく生徒たちが全員、歯切れの悪い返事を返している。

 松陰先生の声でクラスメイト達は冷静になったが、昼食の時間までこの妙な雰囲気が終わることはなかった。

 というより、昼食の時間に事件は起きた。
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